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府中競馬場吟行

                                        平成20年5月19日
たまには俳句らしくないところへと競馬場へ吟行することにした。
折りしも五月。京都では「賀茂の競馬」が五月五日に行われる。神事であり、太鼓や鐘が鳴らされたり、勝敗を扇の色で判断したりと、優雅な行事である。

同じ競べ馬でも、現代の競馬はその優雅さとは遠く、射幸の対象としてである。ただ、英国では、女王陛下のスポーツであり、日本も天皇賞をもうけてあり、明治天皇も行幸したことがあるくらいであるから、本来は正統なスポーツであり、娯楽の対象である。ということで行ってみた。案内もなくほとんど競馬場は始めての女性達である。
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JR府中本町の改札を抜け、一面に馬の写真が出ているスポーツ新聞を始めて買う。新聞などに印をするための赤と青のボールペンを立ち売りしている。買わなかったが、馬券に使う小さなペンをくれた。西門までの歩道橋には、競馬の浮世絵や名馬の疾走の写真が掛けてある。西門を入るとすぐに鹿児島名物が売られ、さつま揚げも好きなのが買える。一瞬買おうかなと立ち止まるが、恥ずかしくてやめた。そこから出ると、広大な競馬場が目に跳びこんでくる。
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左手には巨大な観客席(フジビュースタンド)、右には手前から青々とした芝生、高い柵、芝のトラック、土のトラック。さらに向こうは内馬場。遥か遠くに緑の山々。スタンドの真向かいには、巨大なスクリーン。
早目に着いたので、お弁当でもとスタンドの中に入る。インフォメーションがあり、出走表をもらう。広々としたフード街の京樽でお弁当と漬物を買って再び外に出る。スタンドの席も空いていたのだが、青い芝に誘われてトラックの手前の芝生に日焼けしてはいけないと背を向けて座る。

夏帽を目深に馬場の監視員       彩女
五月光競馬を見ずに芝に寝て     禎子
寝転べば五月の芝生押し返す    恵子
ぎっしりと白詰草が馬場の縁      彩女
桃色の舌や馬くる野の泉         伸子

一時に正門で待ち合わせ、そこから直ぐに投票所(馬券売り場)へ。といっても初体験である。馬券はマークシートで、必要事項は塗りつぶすと聞いてはいた。馬券を置いてあるカウンターの一つに行く。たまたまそこにいた青年に迷惑をかけることになる。なんだ、このおばさんたちは!と思ったかもしれないが、親切に教えてくれる。横からおじさんも口をだす。そこへ案内係りのおねえさんが来て説明してくれ、印をしたシートを機械にお金と共に入れる。選んだ馬は名前がよさそうな感じということしか判断基準はない。シート一枚だけの人、二枚の人といた。そして競馬を見に外へでた。
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誘導馬しづしづと去り夏日差し     禎子
騎手の帽浮き並びたる南風      千晶
ファンファーレ薫風起こし馬駆くる  千晶
いっせいにゲート開きぬ青葉風    喜代子
かけぬける馬のたてがみ草の絮    彩女
青芝へ影落しつつ馬駆ける      伸子
日盛りの馬の過ぎたる土けむり     喜代子
蹄鉄のきらりきらりと薄暑光    伸子
喚声に揺れるスタンド青葉風        禎子
青芝に瞬間の過ぐ競馬かな     千晶
五月晴白馬にしめるような艶       恵子
砂煙うしろに残し夏競馬         禎子
勝馬の涼しく水を飲みにけり       千晶
 
結果は後でもということで、地下道をくぐり内馬場へ。出たところが豪華なバラ園。家族連れで賑わう遊園地もあり、ポピー、矢車草などのお花畑など心憎い演出である。競馬よりもそちらの方に心を奪われた。
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馬たちに瞳のくろぐろとばらの門   喜代子
耳立てて馬立ち止まる大南風      伸子
薔薇の園他人事に聞くファンファーレ  恵子
咲き誇る薔薇の湿りをてのひらに    千晶
白日傘たたみつまらなさうな顔     彩女
馬に馬つづくゆくなりバラ赤く    喜代子
紅の薔薇錆びやすし競馬場       彩女
バラ園のかたわらに止め乳母車     恵子
現れて眼も青き雨蛙         喜代子

二時間半はすぐに経ってしまい、句会をすることにして、再びスタンドの中へ。二階の喫茶室でコーヒーを飲みつつ、夕立を眺めつつ。夕立は帰るころにはやんでいた。

青芝をもえたたせ雨競馬場       恵子

受付のコピー機は馬券しかとってくれず、結局府中本町駅へ出る。近くのスーパーの中で句の用紙をコピー、句会をし吟行は終わった。なお、馬券の結果は・・・・・・。
                                               
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                           文・写真上田禎子
by basyou-ninin | 2008-05-19 10:00 | 吟行
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