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関口芭蕉庵

関口芭蕉庵吟行           2009年4月18日
今回は関口芭蕉庵とその界隈である。芭蕉が延宝五年(三十四歳)から同八年(三十七歳)まで神田上水の改修工事に携わり、この地にある竜隠庵(りゅうげあん)に住んだので、関口芭蕉庵と呼んで大正十五年に東京府の指定史蹟に編入された。現在は神田上水はなく、江戸川のみである。
関口芭蕉庵は、神田川(江戸川)沿いにあり、江戸川橋から西へ約一キロの新江戸川公園との間にある。コースは江戸川橋から歩き、水神社、新江戸川公園とまわり最後に芭蕉庵へ。普通は順序だてて辿ったコースどおりに書くのだが、ここでは、目的の関口芭蕉庵から書こうと思う。以下芭蕉庵とよぶことにする。
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芭蕉庵の正門は桜祭り以外は閉ぢてをり、この日は屋根に猫が眠っていた。句会の後に、四時間後だったが、まだそこにいたのと驚いた。庵には横の胸突坂の通用門から入ることになっている。芭蕉庵は「目白崖下にあり」と「江戸名所図絵」に記されているように、崖を背にしてをり、門の中すぐに芭蕉庵という建物があり、庭には句碑、芭蕉塚、芭蕉堂、瓢箪池などが木々や草花とともにうまく配置されている。吟行の材料には事欠かない。和室が句会場で、この芭蕉像がある。障子の光が柔らかい。
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春惜しむ座して小さき芭蕉像    芹沢 芹
聞こゆるは水音ばかり著我の花   芹沢 芹
明るさの中の静けさ著我咲けり   芹沢 芹
牡丹や水音のして芭蕉庵      上田禎子
白山吹ひょうたん池に小さき橋   上田禎子

芭蕉の「古池の」句碑のそばを抜け、さみだれ塚へ。碑の表面には「芭蕉翁之墓」とあり、芭蕉の句「五月雨にかくれぬものや瀬田の橋」の真蹟を埋めている。翁はさみだれの松を背景とする、一面の青々とした早稲田田圃を琵琶湖に見立て、その風光を愛したために、後の俳人たちが墓とした。芭蕉翁関東七墓の一つ。
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句碑までのプロムナードや蕗の風  牧野洋子
木洩れ日やさみだれ塚へ春帽子   上田禎子

地獄の釜の蓋という名前に似合わないスミレのような薄紫の草花にみんな足を止める。

磴ごとに地獄の釜の蓋ふさぐ    松浦 健
聞きてよりいよよ地獄の釜の蓋  岩淵喜代子
立ちどまる地獄の釜の蓋の前    望月 遥

さみだれ塚の上の芭蕉堂へ。そばに古木の大銀杏があり、幹から太い気根、「垂乳根」が文字通りさがり、その奇妙さに目をみはる。そして竹林へ。竹の下一面に著我が咲いていた。

竹皮を脱ぐと叫びてゐたりけり   松浦 健
竹落葉芭蕉の頃の空の青      芹沢 芹
筍の獣のごとき皮光る       辻田 明
垂乳根の一つは太し囀れり     牧野洋子
雲流れ筍のごぼと突き出して    牧野洋子
筍の伸びきってゐる鬼門かな    望月 遥

神田川に沿って
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有楽町線の江戸川橋から歩く。川沿いは公園で桜が植えられてをり、お花見でも有名だ。

さくらしべ降るたび水のうごきけり岩淵喜代子
桜蕊ふるふる街の音が降る    岩淵喜代子
葉桜の空があそび場雀たち     松浦 健
おほかたは風の吹くまま花は葉に  山田紗也
葉桜の彩の深まる神田川      辻田 明

行く道は若葉若葉である。途中には「芭蕉が詠んだ植物たち」の案内板があり、それには梅、椿、桜、藤、竹、芭蕉、椎、萩、木槿、楓、茶、柿、と十二種が地図つきで書かれてている。さまざまな人々とすれ違う。同じように句帳を持った人たちも。なんとなくお互いに目をそらしたり。犬や猫をよく見かけた。
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花は葉に杖つくたびに鈴が鳴る 上田禎子
貴婦人のやうな犬行き風光る  辻田 明
春眠の猫梁にをり時計塔     武井伸子
春風にくるりくるりと猫の首    武井伸子
猫のゐるベンチに春の落葉かな 山田紗也

ふと誰かが立ち止まる。蚊母樹(いすのき)という珍しい名前に。茶色い瓢の実に。青い葉に膨れた部分があり、それを虫瘤(虫癭)といい、秋になると瓢の実になる。あおあおとした実を手に取ったり、また、乾いた実を吹く人もいてしばらく、そのまわりで大騒ぎをする。

ひょんの実の青葉のかげに膨らめる 松浦 健
戯れにひょんの笛吹く花の頃    山田紗也

神田上水取り入口に使用されていたものが復元された大洗堰跡に着く。周辺は、細長い石組の池になっていて、座るのにちょうどいい形に石が配置されているので、しばし休憩。
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蝌蚪はみな尾のあるかぎり尾を振れり 岩淵喜代子
それらしき手足みゆるか蝌蚪の水  望月 遥
重ねたる波紋の中のあめんぼう   望月 遥
おたまじゃくし大洗堰にみな屈む  上田禎子

椿山荘の中のおそばを食べに寄った人も。結婚式も多かったようである。足をのばして新江戸川公園で春の日を眩しみつつ昼食をとる。

山桜より淡き色五穀米       牧野洋子
花嫁のベールはためく鳥曇     武井伸子
シスターの帽子目深くチューリップ 武井伸子
窓際のプリムラ午後の喫茶店    山田紗也
春深し鳴かぬ亀の子捕えたる    辻田 明
椿落ち赤き波紋の広がりぬ     辻田 明
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                      文・写真上田禎子
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by basyou-ninin | 2009-04-18 07:33 | 俳句