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夏季合宿 会津吟行

             夏季合宿 会津吟行     2008.6.19~21

 1日目 
東京駅から1時間余り、東北新幹線の新白河駅で下車。ここから送迎バスで30分。山道を幾曲がりもして、緑滴る山中に分け入り、バスは福島羽鳥湖高原、レジーナの森に着く。
総勢6名、ににん合宿のはじまりだ。

宿泊施設とおぼしき方向に、半球体のドームが現れた。橅の森の中に建つコテージだ。たった今、宇宙船が不時着したかのようにも見える。
コテージに入り、ほっと一息。ベッドに寝転ぶと、天窓の硝子に木々の葉が揺れているのが見える。
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早速、敷地内の湖畔やハーブ園を散策。曇天ではあったが、空は夕刻まで持ちこたえた。
夕食までに、嘱目十句、席題十句。
 
コテージに番号ふられ落し文            岩淵喜代子
河童忌や部屋のひとりは茶を淹れる        岩淵喜代子
雨音をかたしと思ふパリー祭            岩淵喜代子
白川の関さみだれを分かつかな          長嶺千晶
覗くたび谷底揺るる緑雨かな            長嶺千晶
夏の森抜け来て髪を梳る               長嶺千晶
コテージの丸き天窓緑雨打つ            平林恵子
地より湧く森の匂ひよ六月よ             平林恵子
赤松の幹まで濡れず明易し             平林恵子
駅弁の鮭の厚切り信長忌              芹沢 芹
しんとして岩場の鎖夏つばめ            芹沢 芹
水無月の大樹何かを落しつつ            芹沢 芹
蜻蛉に白磁のやうな一ところ            上田禎子
ぐみの火色みづうみ冷んやりと           上田禎子
百合揺れて老眼鏡にかけ替える          上田禎子
夏ぐみの透きとほりゆく雨の午後          武井伸子
まくなぎや頭を傾けてやりすごす          武井伸子
横顔のほぐれてきたる青鬼灯            武井伸子
 
夕食前に句会。夕食後、降り出した小雨の中、湖の噴水レーザーショーや温泉を楽しむ。
夜は嘱目十句。
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2日目 
明け方、鳥の声が天窓から降ってくる。郭公、時鳥、老鶯などの声。
朝食後に句会。

郭公や櫛通りよき朝の髪                平林恵子
灯を消して森の奥処の地虫聞く            平林恵子
ほととぎす旅の枕に頭を馴らす            岩淵喜代子
眠れない夜は噴水の丈を見て            岩淵喜代子
静けさは涼しさに似て山の宿             芹沢 芹
噴水に真昼の高さありにけり             芹沢 芹
高原に朝のはじまる夏薊                長嶺千晶
そこからは闇溜りなり立葵               武井伸子
分け入れば六月の森沈みこむ            武井伸子
夏つばめ夕べの空に紛れけり            上田禎子
蛇苺雨を呼ぶ風匂ひけり               上田禎子

午後からは、「大内宿・塔のへつり」バスツアーに参加。
バスは山を越え、緑の谷に沿い、青田へと降りてゆく。
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途中、羽鳥湖、大内湖などダム湖を巡る。ダム湖で記念写真。
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前日とはうって変わって、光線はすでに真夏。入道雲も湧き出している。  
茅葺屋根の宿場町、大内宿に着く。
江戸時代の街道の面影を残す一本道は、炎天下、花々を咲かせ、水路を巡らせていた。しきりに夏燕が飛び交う。
宿場が尽きたところから山道となる。少し登って、街道を見下ろすあたりで、思いがけず蜩をきく。
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ルピナスの馬の尾のごと揺れにけり        上田禎子
集落の忽と現れカンナの緋              平林恵子
梅雨蜩大内宿を一望す                平林恵子
古町や軒端に薪を積んで夏             平林恵子   
白く乾き炎昼の旧街道                 芹沢 芹
万緑の底に村あり暮しあり              芹沢 芹
黒南風や山の農協鮭を売り              武井伸子
一村を水音めぐる蝸牛                 武井伸子
湖の大きな無音虫送り                 岩淵喜代子
蜂飼ひて大内宿の大通り               岩淵喜代子
  
 「塔のへつり」の「へつり」とは、川が歳月をかけて、浸食を繰り返してできあがった崖のこと。
崖下のまみどりの淵は、白い花びらを浮かべ、とろりと静まっていた。
歩くと、吊橋がぎしぎし揺れた。
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鮎の串塔のへつりへ川隔て               上田禎子
またたびの花の会津路喉かわく            上田禎子
洞窟の菩薩や夏の灯の涼し               芹沢 芹
手に取りて買ひそびれたるさくらんぼ         長嶺千晶
またたびの白葉ひらひら炎暑くる            長嶺千晶
白南風や眼下に展け宿場町               長嶺千晶
黒揚羽羽音あるとも思へけり              岩淵喜代子
 
突然の真夏日となったツアー。
嘱目二十句。夕食ののち、句会。
夜はぐったりとなって眠る。

3日目 
明け方、ドーム型の屋根にぱらぱらと音がする。夜の間に降った雨が木々の葉に溜り、風が来ると雨雫を降らせる。青時雨。

朝食のあと、全員で敷地内の湿原へ行ってみる。
木道をたどると、野菖蒲、野萓草、夏薊、山法師、睡蓮、河骨などがつぎつぎに現れた。
睡蓮の水面は、光の水泡を散らしている。
東屋に腰を下ろし、湿原を見渡す。
水面に緑の木々と夏雲が映り、気持のいい風が吹き渡っていく。
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河骨に平らな水のめぐりたる               武井伸子
避暑たのし白樺に触れ橅にふれ             芹沢 芹              
河鹿笛別れの時刻来てゐたり               平林恵子
湖岸の灯鎖のやうに夏の夜                上田禎子
首伸べて黄菅の群るる風の中               長嶺千晶
睡蓮の白ばかりなる目覚かな               長嶺千晶
よしきりの声に溺れて帰り来し               岩淵喜代子
湖へゆく道染める桜の実                  岩淵喜代子

数えてみると、いつの間にか六十五句を作っていた。一仕事なした後の充実感がある。 
帰りの新幹線の中、クーラーの涼しさが身に沁みた。         

                     文・写真/武井伸子
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by basyou-ninin | 2008-06-19 10:00