「芭蕉 <奥の細道>からの贈りもの」展と日比谷公園吟行

 「芭蕉 <奥の細道>からの贈りもの」展と日比谷公園吟行   2009.10.17

a0090198_215197.jpg
昨年秋の吟行は、東京・丸の内の出光美術館で開催された「芭蕉 <奥の細道>からの贈りもの」展を鑑賞、その後、近くの日比谷公園を歩いた。
松尾芭蕉(1644~94)が、生涯のうちに残した懐紙や短冊、弟子たちへの書状などを一堂に展示。
出光コレクションから真跡26点のほか、山形県内の各所蔵先、早稲田大学図書館、大垣市立図書館などから50余点の作品が集められた。
俳句は勿論、書においても、傑出した美しい書跡を見せていた芭蕉。
芭蕉の書風は、俳風の変化に呼応するかのように三段階に変化していったという。

第1期は「深川草庵の芭蕉」の頃で、延宝末・天和期から貞享前期(1680~85年頃)。
漢詩文調の超俗的な俳諧を書き記すのに、装飾的な書風を用い、華やかな印象を与える。
第2期は「漂白の詩人」として旅を続けた貞享後期から元禄4年前後(1687~91年頃)。
まるで「古筆」のようだと賞される書風で、平明な内容の句にふさわしい筆致と連綿の美しいバランスが見られる。
第3期は「軽み」を志向した元禄4年以降、元禄7年の没年まで(1691~94年)。
連綿がより軽快に、枯淡・洒脱な味わいを見せる。

左は「野をよこに」発句切入画 芭蕉筆 許六画

墨文字のときどき濃くて霜日和        岩淵喜代子
秋扇大師流てふ線と撥ね           辻田 明
火焔のごと撥ねる書ありて冬隣       武井伸子
芭蕉句のはるかなりけり秋の風       五十嵐孝子
芭蕉展色なき風にたたずみて        五十嵐孝子
秋一日お濠のもとの芭蕉展         小塩正子
行く秋や芭蕉を求め人の群れ        前田可寿子
堂々と書をしたためて冬支度         四宮暁子
美しき字を書く人を恋ふる秋         四宮暁子
 
翌日が最終日とあってか、かなりの賑わいを見せていた会場。
誰もが知っている句を、作者である芭蕉の筆跡で読むのだから、魅入られたように熱い視線を注ぐ人が多かった。
ことに出羽三山発句短冊の前には人だかりがして、肩越しの鑑賞。
a0090198_20104381.jpg

                 出羽三山発句短冊 松尾芭蕉

涼風やほの三か月の羽黒山      桃青
雲の峯いくつ崩れて月の山       桃青
かたられぬゆどのにぬらす袂かな   桃青

併設展は「仙崖」で、その句と絵はユーモアたっぷりの洒脱な味わいだった。

仙崖の座禅の蛙柳散る          辻田 明
仙崖に恋の句ありぬ秋の蘭        芹沢 芹
恋をする僧もありけり色鳥来        武井伸子

出光美術館を出て、近くの日比谷公園へ。
有楽門から入ろうとしたら、入口の交番近くに、思いがけず十月桜が咲いていた。

楽器置く十月桜咲く下に          岩淵喜代子
真中より切株朽ちる神の留守       岩淵喜代子
交番を横目に十月桜かな         望月 遥
冬近し石垣割りて木の根出づ       望月 遥
考える猫に秋風心字池          上田禎子
十月桜仰ぐ唇しんとして           芹沢 芹
 
江戸時代の日比谷見附跡、野面積みの石垣を見て、石垣の周囲にあったという壕を残した心字池へ。
そこからは皆、てんでに公園内の散策を楽しんだ。
ペリカン噴水のある花壇には、薔薇が咲きはじめていた。
a0090198_2118365.jpg

このあたりには猫が多く生息しているようで、日溜りに次々と姿を現した。
a0090198_21282671.jpg

青い実をたわわに実らせた鈴懸の大木や、咲きこぼれる金木犀、黄葉には少し早い銀杏並木など、都心の真ん中の見事な樹木に秋の気配。
樹木の外側には、日比谷のビル群がぐるりと取り巻いている。
a0090198_21315749.jpg

石垣に佇む鳩や秋深し           新木孝介
銀杏のほのかに匂ふ木陰かな        新木孝介
曇天の噴水かなし秋深し          新木孝介
水匂ふ遠くのバラを思ふ時         上田禎子
からつぽの野外ステージ銀杏の実      上田禎子
すずかけの青実や耳に飾りたし        望月 遥
落葉踏む音して猫のちりぢりに        武井伸子
小鳥来るむかし陸軍連兵場          前田可寿子
秋深し素通りしたる見附跡          前田可寿子
銀杏を拾ふ彼方を水流れ          芹沢 芹
散らばつて秋の雀や秋の庭         山田紗也
大木に寄りかかりたる秋思かな       山田紗也
コスモスの風を忘れし真昼かな       山田紗也
黄落や渇きし雀足許に            青木華子
金木犀どこにあるのと問いかけて      五十嵐孝子
紅葉狩集いし公園の騒音や         小塩正子
道の端金木犀のこぼれをり         小塩正子
ハロウインのかぼちやの中のがらんどう   四宮暁子

園内には南太平洋の島でお金として使われていた石の貨幣や南極の石などが置かれていた。

石貨てふ石の穴から覗く秋        前田可寿子
鳥渡る大きな石貨据えられて       青木華子
南極の石に手を触れ秋惜しむ       青木華子
神無月遊んでみたき壺の中        辻田 明
 
芭蕉の筆蹟にはじまり、秋の公園をめぐる吟行の句会場は、巣鴨のレトロな喫茶店。
いかにも昭和っぽい雰囲気の喫茶店で、この日の句会は終えた。
a0090198_22232043.jpg



                   文・写真/武井 伸子


 
    
[PR]
by basyou-ninin | 2009-10-17 10:00
<< 小野竹喬展と北の丸公園桜吟行 飛島・酒田・象潟吟行 >>